○スルタンアフメット・キョフテジスィ

イスタンブール2日目。
ホテルを出てスルタンアフメット地区のキョフテ屋さんで遅めの朝食。
キョフテと言うのは牛と羊の挽肉にスパイスなどを入れて焼き
塩コショウで味付けしただけの料理なのだが、これが妙に美味しかった。
キョフテに限らず、トルコ料理はシンプルな食べ物が多い。
しかしそれら全てが予想以上に美味しいのは素材のせいなのだろうか?
妻と二人でハマってしまった食べ物の一つだ。
飲み物はアイランと言う塩味のヨーグルトドリンク。トルコ人はこれが好きらしく
どこに行っても売られている。日本の甘いヨーグルトに慣れてしまっているため
最初の一口は違和感があったが、飲み慣れるとこれも結構美味しかった。

食後、店を出てドンドルマを食べる。ドンドルマはトルコ名産の伸びるアイスだ。
よくTVなどで棒に付いた餅のように両手一杯に、びにょーーーーんと伸ばした映像が
紹介されていると思うが、妻も子供の頃「なるほどザ・ワールド」で見て以来
ずっと気になっていた食べ物なのだそうだ。
しかし、我々の頼んだドンドルマはそれほど伸びなかった。
話によると本当に伸びるドンドルマはトルコの南にある街・マラシュの名産なのだそうだ。
(イスタンブールにもあるという話だが、我々は見つけられなかった。)
それほど伸びない代わりに、お店の人がちょっとしたパフォーマンスを見せてくれる。

「はいよ」っとアイスを渡してくれたかと思うとひょいと取り上げられ
もらったと思ったらカップだけだったり「あっち見ろ」と指さされてよそ見している隙に
また取られたり・・と気の短い人なら怒り出すのではないかという感じの芸だ。

ようやくアイスを手渡されて食べてみる。確かにちょっと伸びる。
で、その味は・・・伸びないアイスの方が美味しいような気がする。

○アヤソフィア
ドンドルマを食べながらアヤソフィアへと向かう。
ここは外国人観光客(って私もそうだが)で溢れていた。
驚いたのは旗を持った添乗員に引率された欧米人の団体旅行者がたくさんいたこと・・

こういった「ノーキョー・ツアー」は日本独自の文化だと思い込んでいただけに
ちょっと意外な感じだった。

話によるとアヤソフィアはローマ時代に建設されたキリスト教の教会だったらしい。
しかしその後、イスラム教のモスクとして改装されたのだそうだ。
中に入ってみる。・・・ものすごく広い。巨大なドームの壁面には色とりどりの
ステンドグラスやイズニックタイルなどで装飾されている。
夢中で写真を撮ったが、実際に見た迫力の100分の1も伝えられていないような気がする。

長くて細い通路を昇ると2階部分に着く。ここの壁にはキリスト教のモザイク画が描かれていた。
この絵はイスラム教のモスクの改装される際、漆喰で塗り固められて
しまったらしい。しかしそのためにかえって良い状態のままで1000年以上もの間保存されたのだそうだ。
・・・なんだか不思議な感じだ。

○地下宮殿
アヤソフィアを出て地下宮殿へ・・この辺りの観光地はものすごく近くにあるため
歩いて簡単に回れる。ただ、この地下宮殿の入口はそれほど目立っていないため
昨日ベキル君に教わっていなければ迷っていたかもしれない。

中に入るとひんやりと涼しい。人もそれほど多くないため落ち着いた感じの場所だ。
ここはもともと地下貯水池だった場所らしい。奥には魔よけのために設置されたらしい
メデューサの柱が2本あった。


○トプカプ宮殿
地下宮殿を出る。まだ4月なのに外はじりじりと暑い。そのまま歩いてトプカプ宮殿まで行く。
このあたりは公園になっていて、小さな動物園があったり色々な屋台があったりして楽しげな雰囲気だ。
我々もスィミットと言うパンを買って食べてみた。香ばしくて美味しい。

しかし、いくら歩いてもトプカプ宮殿にたどり着かない。どうやら道を間違えてしまったらしい。
さらに悪いことに、この辺りに生えている木の花粉が我々の鼻を攻撃するらしく
クシャミが止まらなくなってしまった。鼻をグスグス言わせながら早足で来た道を戻る。

『トプカプ宮殿→』と書かれた看板まで戻り(そもそもこの矢印が曖昧なせいで道を間違えたのだ)
坂道を上るとようやく入口にたどり着く。
トプカプ宮殿はハレム、陶磁器展示室、衣装展示室、宝物館・・と見所満載の場所でじっくり回れば
半日は潰れそうな感じだ。しかし残念ながら一番の見所である宝物庫は工事中だった。

聖遺物の間にある「ムハンマド(マホメット)の爪」、「ムハンマドの髭」などの「ムハンマドシリーズ」に
「本物?」などと突っ込みを入れながらハレムへ・・

○トプカプ宮殿/ハレム
ハレムは当時の王様(スルタン)が生活していた場所で、ここだけはチケットを買い
ガイドさんに案内されて進む。なんだかものすごく豪華な空間だ。我々の英語力が足りないため
説明の半分は理解不能だったがそれでも見応えは充分だった。

○シルケジ
ちょっと遅めの昼食を取るため、トラムの乗ってでシルケジ駅へ・・
この近くに庶民的なロカンタ街があるのだそうだ。行ってみたが呼び込みが激しくて閉口。
逃げるように通り過ぎ、その先にある控えめなロカンタに入ってみる。
ほうれん草をじっくりと炒めた料理と炒めたナスにトマト味のチキン・・
こういう何でもない店で食べてもちゃんと美味しいのがトルコ料理のすごいところだ。
特にチキンがおいしい。本によるとトルコのチキンは全て地鶏なので日本のものとは味が違うのだそうだ。

「エリニゼ サールック!」ガイドブックを見ながら『ごちそうさま』とトルコ語で言ってみた。
お店の人も笑いながらトルコ語で返してくれた。

○新市街
シルケジからエミノニュまで歩き、そこからまた世界一短い地下鉄に乗って新市街へ・・
今日はイスティクラル通りのトラムにも乗ってみた。

トラムの後ろ側はデッキになっていて、私がそこに立っているといきなり二人組の女の子が飛び乗ってきた。
タダ乗りだ。彼女たちは結構スピードを出して走っている路面電車から身を乗り出し、奇声を発しながら
通行人を驚かし始めた。(しかし中には骸骨の仮面をかぶって逆に子供たちを『脅かし返して』いる人もいた。)
そうこうしているうちに別の男の子が飛び乗り・・と完全に子供たちの遊び場になっているようだった。

終点のタキシム広場でトラムを降り、イスティクラル通りを歩く。
少し歩くとインジと言うシュークリームで有名なお店があったので入ってみる。

○新市街/インジ
トルコのお菓子はものすごく甘い。知識としては充分理解しているつもりだった。
しかし、このお店のシュークリームを食べた時、その本当の恐ろしさを痛感した。

ごく控えめに表現して『バットで頭を叩かれたように甘い』のだ。
ただでさえ甘いシュークリームに、さらにチョコレートがどっぷりとかかっている・・
実際、本当に頭痛がしてきた。甘いものを食べて頭痛がしたなんて生まれて初めての経験だ。

口直しに一緒に頼んだカダイフを食べる。これも有名なトルコのお菓子だ。
・・・これも、ものすごく甘い。パイにじっとりと蜜がかかっている・・
いや、染み込んでいると言った方が正確だと思う。甘さの連続攻撃だ。
全然口直しになっていない。恐らく角砂糖を囓るより甘いと思う。
ひょっとしたら蜂蜜を飲むより甘いかもしれない・・・そんな激甘地獄だった。

しかし、こんなに甘いものを我々の前に座っている太ったおじさんは、ひとりで3皿も
それもニコニコ笑いながら食べている。・・変態だ。味覚異常だ。
ガイドブックによると通常はレモネードを飲みながらシュークリームを食べるのだそうだ。
レモネードって、甘いのだろうか? ・・考えただけでも胸焼けがしてきそうだ。

○新市街/ハジュババ
夕食の時間になったのでこの辺りでは有名なレストラン「ハジュババ」に行ってみる。
ただ、先ほどの甘甘攻撃にやられてしまって食欲は進まない感じだった。
そんな状態でも野菜を中心にしたメゼはおいしく食べられた。ピーマンのライス詰めや
ナスの冷製タマネギ詰め(『坊さんの気絶』と言う大げさな名前が付いている。)など
まるで別腹のように美味しく食べることが出来た。

食後、ウエイターに「スイーツはどうだ?」と聞かれたが今日はもう甘いものは
見たくもなかったのでコーヒを頼んだ。出されたコーヒーを口に含むと・・・

「げふっ!! ・・・甘い!!」

・・・すっかり忘れていた。トルキッシュ・コーヒーは甘いのだ。
甘くないコーヒーを飲みたい時は「ネスカフェ」と言って頼まなければいけない。
知識としては充分理解しているつもりだった。・・・なのに・・

とどめを刺された私に公共機関でホテルに戻る気力は残されていなかった。
タクシーを拾いホテルの住所を見せる。運転手さんはこのホテルを知らなかったようで
しばらく走った後「こっちの道で良いのか?」と聞いて来た。
なんとなく見覚えがあったので私が
「I think so.(だと思います)」と答えると運転手さんも
「I hope so.(そう願ってるよ)」と返してきた。

○DERSAADET HOTEL
無事ホテルに戻る。今日もどっと疲れてしまった。
明日の朝は早い。7時の便でカッパドキアに移動と言うことで5時45分のピックアップだ。
このため少なくとも1時間前には起きて用意をしなくてはならない。
私はスーツケースの奥から日本で使っていた携帯電話を取り出した。
海外では使えない道具も、こうして持ち主が工夫すれば目覚まし時計代わりになる。
私はアラームを5時45分にセットし、ぐっすりと眠りについた。

(続く・・)