○URGUP EVI

朝4時に携帯のアラームが鳴る。今朝は寝坊せずに起きられた。
ゆっくりと用意をしていると荒井注にちょっと似ている運転手さん(以下、荒井さん)が迎えに来た。

○気球ツアー
ガイドブックによるとカッパドキアの気球ツアーは2社あっていずれも一人200ドルぐらいかかる。
それなりに高価だが、ここまで来たらぜひ体験したいと思い日本から申し込んでおいたのだ。

荒井さんは英語が苦手らしく最初に「グッモーニン」と行ったきり無言で車を
スタートさせる。やがて別のホテルの前で停車。しばらく待っていると団体さんが
ドヤドヤと入って来た。日本人かな? と思う間もなく中国語らしき言葉で賑やかに
(と言うかうるさく)話し始めた。・・皆さん朝からテンションが高い。

車はその後も何件かのホテルをまわり、結局気球を上げる場所に着いたのは
朝の7時ぐらいになっていたと思う。だったらもう少し遅い時間にピックアップして
欲しかったような気もする。

気球をセッティングしていいる間、温かい飲み物が出される。
結構肌寒かったので(日中はあれだけ暑くなる癖に・・)有り難かったが
この付近にはトイレがないのであんまり飲み過ぎるとつらいかもしれない。

賑やかな中国系団体さんからちょっと外れたところに一人旅らしき男性が立っていた。
ポケットに「地球の歩き方」が入っていたので(カバーを付けていても紙が青いので
すぐにわかる。)日本語で話し掛けてみる。・・良かった。ちゃんと通じた。
横浜から来てイスタンブール→カッパドキア→エフェスと旅をしているのだそうだ。
名前も聞かなかったのでとりあえずここではヨコハマ君と呼ぶことにする。

ヨコハマ君は昨日スクーターでカッパドキアを回ったらしい。

ヨコハマ君「ちょっと道に迷ったけど、結構気持ち良かったですよ」
妻 「あの・・料金はいくらぐらいかかるんですか?」

妻はレンタルスクーターに興味を示している。
明日は終日フリーなのでスクーターを借りるのも確かに楽しそうだが
ひとつ大きな問題がある。我々は二人ともスクーターの運転経験がないのだ。

・・などと話しているうちに我々の乗る気球の準備が出来たようだ。
他の人たちは10人ぐらいのグループで大きなゴンドラに乗っているのに
我々だけ3人乗りの小さなゴンドラだった。つまり私と妻、係りの人と言う貸し切り状態だ。

バーナーが点火され、すすすっとゴンドラが浮上してゆく。
「わわわっ!」
高所恐怖症ではないはずなのだが、結構焦る。当たり前だが地に足が着かない感じだ。
気が付くとゴンドラの手すりをぎゅっと握っている。

・・やがて目の前に素晴らしい景色が広がった。
昨日歩いて回ったウチヒサール、ギョレメ、パジャパなどが一望の下に見渡せる。
風に乗ってゆっくりと浮上したり、奇岩群のすぐ近くまで下降したり・・

空から見るカッパドキアは、まるで夢の中の景色みたいだった。

「すげーーー!!」

何度も叫んでしまう。高いところにいるという恐怖心は全く無くなっていた。

30分ぐらい? 経った頃、係りの人が
「そろそろ着陸するからゴンドラの手すりにしっかりと掴まってくれ」と言う。
「OK」そう言って手すりに掴まる。すると・・・

ずごごご・がががっ!!
ゴンドラはものすごい勢いで地面にぶつかり、その後風で引きずられごろごろと転がった。
当然、中に入っている我々もドタバタとあちこちにぶつかり、私は口の中を切って
しまった。妻も私の首から下げたカメラが顔に当たり呻いている。
この着陸は明らかに失敗ではないだろうか?

その時突然、古典の授業で習った『高名の木登り』と言う教訓を思い出した。
高名の木登り(木登りの名人)は弟子が高い木に登るのを見てもただ黙って見ている。
しかし、弟子が木を降りる時は「危ないから気を付けろ!」と声を掛けるのだそうだ。

木を登る時、人は誰でも恐怖心を感じるためわざわざ声をかけなくても慎重に行動する。
しかし、降りる時はその緊張がゆるんでしまい事故に遭うことが多いと言う教訓だ。
私もすっかり油断していた。ふわっと浮上したゴンドラはふわっと着陸するものだと
思い込んでいたのだ。

ここでもうひとつ教訓。
「役に立つ教訓ほど、痛い目にあった後に思い出す」

ゴンドラがずりずりと地面を引きずった跡

その後、荒井さんの運転でホテルに戻る。
ホテルで朝食を食べた後、カッパドキアツアー2日目へ・・

○デリンクユの地下都市
2日目のツアーはデリンクユの地下都市から始まった。
この地下都市の歴史は紀元前400年頃までさかのぼることが出来るらしい。
アラブ人から逃れた4万人ものキリスト教徒たちが隠れ住んでいたこともあるらしい。

ヒデ坊に先導され、狭い通路を腰をかがめて歩く。蟻になった気分だ。
日の光のほとんど当たらないこんな場所に、当時の人たちはどんな思いで
生活していたのだろう?

○オニキス屋
その後、車は「ギョレメ・オニクス」と言う宝石屋で止まった。
ここでも昨日の陶芸工房と同様に、やたら日本語の上手な職人さんが海泡石や
トルコ石について説明してくれる。その後、お買い物タイム。
こういうお買い物タイムを否定するつもりはない。旅をしていればどのみち何か買うし
どうせ買うのなら安くて品揃えが豊富で保証のしっかりとした店に行くのが一番いい。
そういう意味ではお客さんは得をしているのだ。また、お店側も定期的にお客さんが
入って来るので得をするし、ツアー会社もお店からバックマージンが入って得をする。
つまり全員が得をする完璧なシステムなのだ。
ただ、昨日のように商売っ気が露骨だとちょっと引いてしまう。
せっかくなので今回は記念に一番小さなトルコ石を買った。


○ローズバレー
午後からはローズバレーへ・・炎天下の中、結構過酷に歩かされる。
でも苦労した分、素晴らしい景色を見ることが出来た。
その名の通り、薔薇色の岩を眺めていると
「日本に帰ったらお友達にトルコのこと紹介してください」
と、ヒデ坊が言った。いつもはおちゃらけているヒデ坊だったが
この時はすごく真面目な顔をしていた。

「ホームページに旅行記書いて、みんなに見て貰うよ!」と私。
・・ヒデ坊、ちょっと遅くなったけど約束は守ったからね。

○カルデッシレル2
と言うことで2日間に渡るカッパドキアツアーは無事終了。
結構ハードだったがヒデ坊のお陰でとても楽しいツアーだった。

夕食はカルデッシレル2でピデと言うトルコ風のピザを食べた。これも結構おいしい。
前にも書いた通りトルコの食堂はどこでも無料のパンが出る。
しかしピザを頼んでもパンが出るのはどうだろう?
ライスおかわり自由のトンカツ屋なら良くみかけるが、ライスおかわり自由の寿司屋が
あったら絶対変だ。それと同じような違和感を感じてしまった。

(続く・・)